日本を訪れるムスリムは、礼拝の場所や食事など、多くの心配事があります。株式会社フィールジャパン with Kは、そんな訪日ムスリムの不安を解消する旅行代理店です。代表取締役の岸田武雄氏に、インバウンドの課題や今後の展望などについてうかがいました。

弊社は、東南アジアや中東をターゲットにした訪日旅行の企画・運営を行っています。当初はムスリムのみを対象としていましたが、現在はムスリムを中心に、ノンムスリムのお客様も含めたサービスを展開しています。

私は、前職でマレーシアや中東に駐在していた経験があります。駐在当時のマレーシアは、マハティール元首相が提唱したルックイースト政策によって、日本は見習うべき国の一つとして意識されていました。しかし、日本は非イスラム諸国なので、ムスリムにとって行きたくても気軽に行けない国だったのです。
そこで、ムスリムにも日本旅行を安心して楽しんでもらおうと起業し、旅行業登録をしました。

日本で旅行サービスを手配するには旅行業登録が必須です。
しかし、日本在住の外国人などが、SNSを通じて旅行の手配やガイドを請け負う行為が横行しているのが実情です。これらの外国人はアルバイトのような感覚、または親切心で行っているのかもしれません。しかし、たとえ少額であったとしても違法行為。この事実を知らず、無許可で旅行手配をおこなう外国人が後を絶ちません。

この現状に対して国の取り締まりが行き届いていないことも相まって、中小旅行業者の経営に大きな痛手となっています。
このことは、日本が観光立国を目指す上で避けて通ることができない重要な課題であると考えています。

私が創業した当時、ムスリムの嗜好や習慣はほとんど知られておらず、日本にはお祈りのスペースも、ハラール料理を提供するレストランもほとんどありませんでした。ツアー企画のため、ムスリムと共に1件ずつレストランを訪れ、ハラールであるかを実際に確認して回り、宿泊施設にお祈りのスペースをご用意いただきました。
日本の料理をムスリムフレンドリー仕様に用意いただけるよう、お願いしたこともあります。こうした取り組みの結果、これまでに弊社ツアーを多くのムスリムが安心して楽しんでいただくことができました。

ムスリムへのおもてなしは、通り一遍には出来ません。国や地域によって、また個人によっても考え方や習慣が全く異なります。教義に厳格な方も、そうでない方もいますので、差異があるということを理解し、それを前提とした柔軟な対応が最も重要だと考えています。
日本国内でのムスリムフレンドリー認証やハラール認証なども徐々に海外ムスリムから認知されてきており、認証取得された商品・サービスにこだわるお客様も増えつつあります。

食事に関しては、この10年余りで日本食自体が益々ポピュラーになってきたと感じます。オーセンティックな日本食を求める訪日ムスリムも増えてきました。
一方で「完全ハラールな日本食レストラン」は、かなりレアな存在だと思います。
そのため料理提供にあたっては、ポリシーを説明し、ご納得いただけた上でご案内してきました。

宿泊、飲食などインバウンドに関わる多くの日本企業が、ムスリム対策＝ハラール認証取得と思い込みがちですが、豚・アルコール由来の排除やその他屠畜肉への配慮など、ハラール性の担保に関する最低限の取り組みと併せて、商品・サービスの提供時におけるポリシーをしっかり事前に伝えていれば、トラブルは避けられると思います。

現在は、空港や著名な観光施設にはお祈りの場所が設置されており、日本はムスリムフレンドリーな国になりつつあります。2月から3月にかけて、ムスリムの訪日旅行が本格化すると想定しています。

コロナ禍によってインバウンド需要が壊滅的な影響を受けました。この3年間で、訪日観光ムスリムを対象とした飲食店や宿泊施設が閉鎖を余儀なくされたケースが数多くあります。こうした背景を受け、弊社は現在ムスリム対応を続けている事業者様の確認作業を進めているところです。

＜事業者概要＞
事業者名：株式会社フィールジャパン with K
本社所在地：〒164-0011 東京都中野区中央5-4-24　第5小河原ビル402
事業内容：特定技能制度 外国人採用支援（特定技能制度登録支援機関　20登ー005429）- 特定技能制度を活用したインドネシア人の国内就労を支援／旅行代理店 (東京都知事登録 旅行業3-6242号)- 東南アジア / 中東からの訪日旅行を企画・運営
公式サイト：株式会社フィールジャパン with K